新会社法で株式会社はどうなる?

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Q 4 - 0.株式会社はどうなるのか?〜取締役の人数と任期について〜

私は現在、小規模な株式会社を経営しています。現在は親族や取引先などに依頼して、役員の頭数を揃えているのですが、新会社法の施行を機に、役員などの配置を見直したいと考えております。

そうですか。それではまず、株式会社の「機関設計」についてお話をさせていただきます。「機関設計」というのは会社を運営する役割分担のようなもので、株主総会、取締役・代表取締役、監査役などをどのように設置するかをいいます。

よろしくお願いいたします。

株式会社でも取締役は1名でOK(非公開会社の場合)

従来の株式会社では、まず株主総会を設置し、さらに取締役を3名以上、取締役の中から代表取締役を1名以上、監査役を1名〜3名以上(会社の規模による)と、最低これだけは頭数を揃えなければなりませんでした。

そこで、実質的には代表取締役が1人で会社を動かしているにも関わらず、あと2名の取締役や監査役を揃えるために、妻や息子の名前を借りたり、親戚や取引先などに頭を下げてお願いしたりしていたケースも多かったかと思われます。

そう、まさにうちの会社も、そのような状況なのです。そこで新会社法の施行を機に、ただ頭数をそろえるだけの取締役・監査役はなくして、代表取締役である私だけを役員として残したいのです。

新会社法が施行されると、定款に「株式全部の譲渡制限」という規定を定めることによって(これを「非公開会社」といいます)、株主総会と取締役1名だけという、あたかも従来の有限会社のような簡単な組織で、株式会社を運営できるようになります。なお、そのためには定款の変更や登記など、一定の手続きが必要となります。

定款に「株式全部の譲渡制限」を設けるのですね。「一部の譲渡制限」ではダメなのですか?

はい。「株式の譲渡制限をしていない会社」および「株式の譲渡制限を一部しかしていない会社」(これを「公開会社」といいます)では、この規定はあてはまりません。「公開会社」では従来どおり、取締役は3名以上必要で、取締役会を設置し、監査役(会)を設置する必要があります。

すると「公開会社」というのは、株式を上場していたり、店頭公開したりしている意味ではないのですね。

はい、ここでいう「公開会社」か「非公開会社」かの区別は、株式を上場・店頭公開しているかどうかとは別問題です。上場や店頭公開をしていない会社でも「公開会社」になる場合がありますので、判断が難しい場合には、個別にご相談をいただき、会社の定款を確認させていただくことをお勧めいたします。

取締役の任期が最大で10年に!(非公開会社の場合)

それから取締役の任期ですが、当社の場合代表取締役である私がずっと経営を行うつもりです。取締役の任期は従来は2年でしたが、2年ごとに「役員変更の登記」を行うのも結構手間なのですね。今後は私だけがすっと取締役で変更予定もないので、任期を延長したいと思うのですが。

私としては、2年に一度「役員変更の登記」をご依頼していただいたほうが「商売」にはなるのですが(笑)

4年に1回のオリンピックやサッカーのワールドカップでさえ、この前終わったかと思えばすぐ次の大会が始まっていたりするのに、2年に一度というのは、かなり短いですよ(笑)。

確かに、おっしゃる通りです(笑)。この点、新しい会社法では、「非公開会社」については、定款で定めることによって取締役や監査役の任期を最大10年に延長することが出来るようになります。

ただし、「公開会社」については、原則として取締役は2年、監査役は4年と、従来どおりの任期ですが。

破産者も取締役に選任可能に

その他に、役員関連で何か改正されたことはありますか?

社長の会社ではあまり関係がないかもしれませんが、新会社法の施行後には、破産した人を取締役することが出来るようになります。これによって、例えば自分の会社を倒産させ、その会社の連帯保証をしていたため自分も破産してしまった元経営者の方でも、再起を図りやすくなったといえます。

なるほど、確かに最近の不景気で、破産してしまった元経営者の方も多いでしょうから、そういう人たちにとってはありがたいですね。すると、万が一私が破産したとしても、そのまま取締役を続けていいということですか?

いえ、現在取締役となっている人が破産した場合には、破産は取締役の「退任事由」ですので、いったん退任することになります。ただ、そのあとでもう一度、破産した人を取締役に選びなおすことが出来るようになるということです。

株式会社はどうすればよいか?

先生、わかりやすいご説明ありがとうございました。当社の役員の配置についても、一度検討してみます。ただ、役員を代表取締役の私一人だけにするにしても、その他の取締役については当社の定時株主総会が開かれる今度の6月でちょうど任期が切れるので、それまで待ってから変更したいと思います。

そうですね、それでいいと思います。

それでは、5月の新会社法が施行された段階では、なにかしなければいけない手続きなどはありますか?

いえ、社長のように、現在すでに株式会社を経営している方については、新会社法が施行されても、特に先ほどのような「機関設計」を変更したりしなければ、原則としてそのまま特別な手続きをしなくても、今までどおりに会社を運営できます。

取締役を1名にするなど「機関設計」を変更する段階で、定款変更や登記をしていただければ結構です。

わかりました。ところで、他になにかアドバイスはございますか?

社長の会社の株主は、どのような顔ぶれですか?

私が40%、息子が20%、私の弟が40%です。

弟さんが株式の40%も所有しているのですね?

ええ、この会社は私の父が設立したものですが、父が死亡した際に、母が家を、私達兄弟が会社の株式を相続する事になったため、このような割合になっています。

弟さんは、経営に協力的ですが?

それが・・・そうともいえないのですね。

取締役の中には、弟さんは入っていますか?

いえ、弟は責任は負いたがらないくせに、口だけは出してくるので・・・現在の取締役は私と妻と息子の3人です。ちなみに監査役は取引先の社長にお願いしています。

なるほど、わかりました。そうなると、社長の会社の場合には、現状の「機関設計」を維持した方がいいかもしれませんよ?

それはなぜですか?

先ほどの説明の通り、新会社法の施行後には、「非公開会社」であれば、取締役は1名でもよくなります。無理に3名の頭数を揃えて、形ばかりの「取締役会」を設置したり、監査役を設置する必要は、確かになくなります。

しかし「取締役会を設置しない会社」では、株主総会の権限が非常に強くなります。会社の経営に関する重要事項は、すべて株主総会が決定権を持つようになりますし、また、監査役を置かないことで、株主総会が直接取締役を監督するようになります。

なるほど、弟が経営に口を出せる度合いが、より高まってしまうわけですね。

そのとおりです。例えば、中小企業であれば、取締役個人が会社にお金を貸し付けたり、逆に会社からお金を借りたりといったことを行う場面もあるかと思います。このような場合は、法律上「利益相反行為」といって、取締役会が設置されている会社では「取締役会」の承認が必要となります。しかし、取締役会が設置されていない会社では、「株主総会」の承認が必要となってしまいます。

しかも、厄介な事に、例えば社長個人が会社とお金を貸し借りする際の決議には、社長自身は参加できないのです。

そうなると、取締役会であれば、妻と息子の賛成があればOKなのに、株主総会の場合には、弟の賛成が必要となるのですね。

そうなのです。このように、「取締役会」を設置するかしないかによって、取締役の経営を監督するのが「取締役会」であるか「株主総会」であるかの違いが出てきます。

そうすると、例えば「口うるさい」株主がいる場合には、取締役会を置かないことで、かえって経営がやりづらくなる可能性もあるわけですね。

はい。それに、危機管理上も、果たして代表取締役1名のみという会社の形態が本当に好ましいのかは、疑問があります。まあ、社長の場合はまだお若いですし、とても健康なので、問題はないかもしれませんが。

わかりました。では、役員の任期についてはいかがでしょうか?

私としては、任期は短い方が、役員変更の登記の仕事をいただけるので、ありがたいのですが(笑)。

まあ、それはともかくとして、役員の任期についても、変更の登記費用を節約するために、任期を本当に10年に延ばしてしまっても良いのか? という問題もあります。

といいますのは、何らかの事情で取締役を解任、つまり「クビ」にする場合には、そのクビにされた取締役から会社に対して損害賠償を請求できる場合がありますが、クビにされた時点でその人の任期があと何年残っていたかによって、請求できる金額に影響が生じるからです。

例えば、取締役の任期を10年に設定している場合で、その人を2年後に解任すると、「残り8年分の報酬」を損害賠償として請求される可能性があります。

なるほど、そういう問題もあるのですね。

この点、従来どおり取締役の任期を2年にしておけば、その人は「任期満了」で自動的に退任となります。あとは、その人を再任しなければ「クビ」にしたことにはなりませんので、「すみやかにお引取り」願えるわけです。

役員の顔ぶれによっては、任期をあまり長くするのは考えものだということですね。

その通りです。ただ、社長の会社の場合には、取締役は奥様と息子さんですので、まあ大丈夫だとは思いますが。あとは、現在取引先にお願いしている監査役の任期をどうするかですね。

例えば、任期を取締役、監査役とも3年とするのではどうでしょう?

いえ、それはダメです。取締役の任期については、原則は2年で、これよりも短くする事も可能ですが、監査役の任期については原則4年で、これよりも短くする事は出来ないのです。

すると、取締役については、任期は原則の2年より短くも長くも出来るけれど、監査役については、任期は原則4年で、それより長くはできるが、短くは出来ないわけですね。

「非公開会社」の場合は、そうなります。そして、長くする場合の上限が10年ということです。

わかりました。それにしても、「新会社法」というのは、結構奥が深いようですね。

そうなのです。新会社法では、「機関設計」や「役員の任期」ひとつとっても、それぞれの会社ごとに、その実情にあった形でルール(定款)を定めることができるようになります。この点が、一律に規制していた従来の「会社法」との大きな違いなのです。

それは反面、ルール(定款)の定め方を誤ってしまうと、その会社自身が重い責任を負わされるということなのですね。

役員の配置や任期も、目先のことにとらわれると、あとでおおきなツケを支払わされるということなのですね。

経営の自由度が増し、選択肢が増えるだけに、選ぶ側の「自己責任」の度合いが大きくなります。

なるほど、新会社法を活用して、会社を発展させるか、新会社法に足元をすくわれて、会社を衰退させるかは、まさに経営者にとって重要な課題になるわけですね。今日はいろいろとありがとうございました。

また何かございましたら、ご相談ください。

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会社法を活用するための経営者のみなさんや起業家のみなさんの参考となれば幸いです。是非ご活用下さい。
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