事業承継と株式の種類

事業承継と株式の種類について

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Q 4 - c.株式会社はどうなるのか?〜事業承継と株式の種類について〜

私の会社では、ずっと今まで私のワンマン経営でやってきたのですが、そろそろ引退して息子に後を継がせようかなと考えております。息子は2人いて、そのうちの長男に継がせようと思うのですが、どのようにしたら良いでしょうか?

わかりました。ところで、社長の会社は株式会社ですか?

いえ、現在は有限会社です。ちなみに、100%私の出資です。

なるほど、それでしたら「新会社法」の施行後に、まず株式会社に移行するのも一つの方法ですよ。

それはなぜですか?

新会社法が施行されると、株式会社では、これまでよりもさまざまな種類の株式を発行することが出来るようになります。例えば、利益の配当※を優先的に受けることができる株式や、議決権のある株式、ない株式などです。

(※注:新会社法の施行後には、「利益の配当」ではなく「剰余金の分配」という言葉に代わります。ここでは話を解り易くするため、あえて現行法の「利益の配当」という言葉を使用しています。)

うちのような中小企業で、優先株とかを発行するのですか?

はい、いままでは「優先株」とか「議決権制限株式」というと、それは大企業が発行するもので中小企業には関係ないことのように考えられていましたが、実は中小企業にとっても、使い方によっては非常に便利なものなのです。

ただし、有限会社ではこれらの制度を利用することが出来ないので、株式会社に組織変更をする必要があるのです。幸い新会社法の施行後には、役員の増員や資本金の増額なしに組織変更できますので、ひとつ検討してみてください。

それでは、株式についてもっと詳しく説明していただけますか?

わかりました。

さまざまな種類の株式が発行可能に

もし社長の会社で、いきなり株式全部※を長男に譲ってしまえば、多額の贈与税が課せられることになります。
(※注:新会社法では、有限会社の「持分」も「株式」と呼びます。)

そうなんですよ、それがまず一つ目の悩みです。

ちなみに、株価というのは一般に会社の業績が良いほど高額になりますので、業績の良い会社ほど、贈与税の問題から事業の承継が難しいというジレンマに陥り易いのですね。

このような場合に、例えば株式のうちの50%を議決権のない株式にして、その議決権のない株式は引き続き自分が保有し、議決権のあるほうの株式のみを長男に贈与すれば、長男は実質的には会社の経営の決定権をすべて握ることができますし、贈与税も全部の株式を譲るよりは安く済みます。

なるほど、そういう方法があるわけですか。それに、こうしておけば、仮に私が亡くなった後も、長男は会社の経営を続けやすくなるわけですね。

はい、もし不幸にして社長さんが亡くなられた場合に、残り50%の株式のうちの何%かを次男が相続したとしても、次男が相続した株式には議決権がありませんので、長男の会社経営に口を出すことを制限することが出来るわけです。会社の経営権を巡って兄弟げんかが起こることを、ある程度は防ぐことが出来るわけですね。

実は、それが第2の悩みでした。恥ずかしい事ですが、息子兄弟の仲はあまりいいとはいえない状態ですので。

この例では、さらに長男に譲る株式を、議決権はあるが、利益の配当額が少ない株式(議決権のある劣後株)、オーナー社長の手元に残す株式を、議決権はないが、利益の配当額が多い株式(無議決権の優先株)にしておけば、長男に譲る株式の評価額をさらに抑えることが出来るので、贈与税・相続税対策としてより有効なわけです。

なるほど。長男は利益配当は少なくても、「役員報酬」として収入を得ることが出来ますし、私は年金と配当で、まあ暮らしていけるわけですね。

さらに、株式に「譲渡制限」をつけておけば、株の評価額はさらに下がりますし、自社の株が見知らぬ第三者の手に渡ることを、防ぐこともできるわけです。

この「譲渡制限」は、今までは一部の株式だけに設定するといったことが認められていませんでしたが、新会社法の施行後には、例えば「議決権がある株式のみ譲渡制限をつける」など、一部の株式のみに設定することも、出来るようになります。こうすることで、会社の乗っ取りを防ぎつつ、議決権のない、つまり経営に口を出せない株式だけを流通させることも出来るわけですね。

もっとも、この場合には「公開会社」の扱いになりますので、取締役会や監査役(会)の設置が必要となりますが。

相続人から株式を買い取ることが可能に

なるほど、よくわかりました。ただ、仮に私が今50%の「議決権のある株式」を長男に譲って、残り50%の「議決権のない株式」を手元においたとしても、私が死んだらこの「議決権のない株式」のうちの何%かを、次男が相続する可能性もあるわけですよね。

確かに経営権は長男にあるわけですが、できれば私の死後は株式のすべてを長男に相続させたいと思うのですが。

わかりました。このような場合には、一つには「遺言」で「株式はすべて長男に相続させる」旨を書き残しておく方法があります。

ただこの方法ですと、失礼な言い方ですが、社長の財産状況によっては、次男に「遺留分減殺」という形で株式を「取り返されてしまう」可能性があります。次男にも現金や不動産など、何らかの財産を相続させるような形にしないと、結局は遺産相続で兄弟が余計にもめてしまう可能性があります。

そうですね。それに、私は確かに会社は長男に継がせたいのですが、だからといって次男に財産を残したくないということでは決してないのです。ただ、困った事に、私は実は個人名義での財産を、あまり持っていないのですね。現金や不動産など、ほとんどが会社の所有です。

なるほど、わかりました。それでは、第2の方法があります。新会社法では、あらかじめ定款に定めておくことにより、相続によって株式を手に入れた相続人から、会社が強制的にその株式を買い取ることが出来る規定を設けることも、認められるようになります。

すると、私の死後、次男が株式の何%かを相続したとしても、その株式を会社が強制的に買い上げることが出来るのですね。

はい。ただし、「あらかじめ定款で」定めておく事が必要です。また、次男から株式を取得するための財源を会社内に確保する必要があります。

わかりました。ありがとうございます。次男にしても、会社の株式よりも現金が手に入ったほうが、むしろありがたいと思うでしょう。住宅ローンも抱えていますし。

それにしても、新会社法では株式の発行でも、それぞれの会社の置かれている状況ごとに、さまざまなパターンを使い分けする事ができるのですね。

そうなのです。例えば、もし社長が「会社で倒れるのなら本望だ」というお考えで、生涯現役で経営する場合でも、とりあえずその株式の50%を「議決権のある劣後株:A株」、残り50%を「無議決権の優先株:B株」にしておいて、遺言書で「A株は長男に、B株は次男に、それぞれ相続させる」と書いておけば、自分の死後に、会社の経営権を巡って兄弟が争うといったことを防ぐことが出来るわけです。

いやいや、「老兵は死なず、ただ去るのみ」ですわ(笑)。

まだまだお元気そうではないですか(笑)。

いえいえ、もうこの辺が引き際ですよ。それで、このようにさまざまな種類の株式を発行するには、どのような手続きが必要ですか?

このような種類株式を発行する場合には、あらかじめ定款でその旨を定めておくことが必要です。それから、株式を発行したら登記も必要となりますので、そのときにはまた私にご相談下さい。

わかりました。そのときは、またお願いします。

株式の譲渡制限について

ところで先生、今回のお話で「株式の譲渡制限」という言葉が出てきましたが、これは株式を他人に譲渡することが出来なくなるということですか?

いいえ、株式の譲渡制限というのは、例えば定款で「当会社の株式を譲渡する場合には、取締役会の承認を要する」といった具合に定めておくことをいいます。株式の譲渡自体を禁止するのではありません。

こうすることで、自社の株式が見知らぬ第三者の手に渡ったり、「口うるさい株主」がさらに多くの株式を手に入れて、さらに力をつけたり、会社を乗っ取ってしまうといったことを事前にチェックすることが出来るわけです。

なお、取締役会を設置しない会社では、「株主総会の承認が必要」になりますが、定款で「代表取締役の承認が必要」と定めることもできます。

なるほど、わかりました。これは有限会社でも同様ですか?

いえ、社長がもし「有限会社」のまま経営を続けるのでしたら、「株主※以外の第三者に株式※を譲渡する場合には、株主総会※の承認が必要」という扱いで、この扱いは、新会社法の施行後の「特例有限会社」でも同様です。

つまり「特例有限会社」では、その株式を『第三者』に譲渡する行為は制限できても、『株主同士で株をやり取りした結果、持ち株比率が変わる』ような行為は制限できないのですね。もし、これも制限したい場合には株式会社への組織変更が必要となります。

(※注:新会社法では、有限会社の「社員」は「株主」に、「持分」は「株式」に、「社員総会」は「株主総会」に読み替えがなされます。)

わかりました。あとは、株式について何か変更点はありますか?

株券は、発行しないことが原則に

株券は、発行しない事が原則になります。ここでは『株式』ではなく、印刷された紙である『株券』のお話です。従来は、株式会社は株主に対し、株券を発行しなければなりませんでした。しかし、平成16年度の商法改正で、定款に「当会社は、株券を発行しない」旨の規定があれば、株券を発行しなくても良いことになっていました。

新会社法の施行後には、株券は発行しないのが原則となり、従来とは逆に「当会社は株券を発行する」旨の規定がある場合にのみ、発行することになります。

ただし、「非公開会社」では、たとえ「当会社は株券を発行する」旨の規定がある場合でも、株主から請求がなければ、株券を発行しなくてもよいとされています。

えっ、従来は発行するのが原則だったのですか? でも、別に株式を上場しているわけでもない中小企業で株券を発行しているという話は、あまり聞いた事がないのですが。

社長の会社のような有限会社では、逆に「株券」ならぬ「持分券?」を発行する事は、株式会社とは逆に禁止されていました。

また、株式会社であっても、中小企業で実際に『株券』を発行している会社は、あまりなかったというのが実情だったのですが、今回の改正では、法律がそれを「追認」する形になったわけですね。

なるほど、そういうことだったのですか。でも、今回の改正では、株式を上場しているような大企業でも、株券を発行しないのが原則になるのですか?

はい、法律上は上場企業であっても、株券は、発行しない事が原則になります。現在のようにインターネットで株式を売買する時代には、「デイ・トレーダー」と呼ばれる、一日に何度も株式の売り買いをする人々もいるわけですね。こうした場合に、いちいち紙で出来た『株券』を、売買の都度やりとりするというのは、実情にあわないので、廃止したという面もあるからなのです。

そうでしたか、先生、今回の話はとても参考になりました。どうもありがとうございました。

事業承継の話は、今回お話した以外のことについても、税金などさまざまなことが関係してきますので、社長さんの会社の税理士さんとも、よくお話をされることをお勧めいたします。

わかりました。それではまたなにかございましたら、よろしくお願いいたします。

こちらこそ、よろしくお願いいたします。

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会社法を活用するための経営者のみなさんや起業家のみなさんの参考となれば幸いです。是非ご活用下さい。
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